手作りお菓子をフリマアプリで売るのは違法?食品衛生法から見た境界線

Two people arranging chocolate cookies on parchment paper, ready for baking. Uncategorized
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フリマアプリのハンドメイドカテゴリを覗くと、手作りクッキーや自家製ジャムがずらりと並んでいます。「趣味で作ったものを、欲しい人に売っているだけ」と思っている出品者は少なくありません。でも、これ、けっこう際どいことをしている場合があります。

「趣味の手作りだから大丈夫」という思い込み

結論から言うと、趣味であっても食品を継続的に販売するなら、食品衛生法上の営業許可が必要になる場合があります。「趣味だから」「少量だから」は、許可の要不要を決める基準にはなりません。

食品衛生法は、食品を扱う営業について都道府県知事などの許可を求めています。ここでいう「営業」は、反復性や継続性、社会性を持って食品を提供する行為を指すのが一般的な考え方です。つまり、一回きりで友人に手渡すのと、アプリで継続的に注文を受けて発送するのとでは、法律上の扱いがまったく違ってきます。

たとえばAさんが週末ごとに焼き菓子を作り、フリマアプリで月に10件ほど発送しているとします。金額は1個300円程度でも、これは反復して行う販売にあたる可能性が高く、菓子製造業の許可を持たない場所で作った商品を売っていれば、法律違反になりかねません。

ここは迷うところですが、「一度だけ、友人の結婚式のためにお菓子を作って渡した」というケースは、営業には当たらないと考えられます。反復性がないからです。線引きは行為の性質で決まるのであって、金額の大小だけでは決まりません。

反復・継続・営利性があると許可の対象になる

実務上のポイントは、反復性・継続性・営利性の三つがそろっているかどうかです。この三つがそろえば、規模が小さくても許可対象になり得ます。

しくみとしてはこうです。食品衛生法は、食中毒などの健康被害を防ぐために、一定の食品を扱う施設には許可を求めています。菓子、惣菜、乳製品など、食品の種類ごとに「製造業」「加工業」といった区分があり、それぞれ設備基準が決まっています。自宅のキッチンで作ったお菓子を継続的に売るなら、本来はその基準を満たした施設で作る必要が出てきます。

具体的な場面を考えてみましょう。Bさんは自宅でパウンドケーキを焼き、月に20個ほどをSNS経由で予約販売しています。1個1500円、月商にすると3万円程度です。金額は小さいですが、毎月決まって行っている以上、継続性は明らかです。この場合、保健所に相談せずに続けていると、無許可営業を指摘される可能性が出てきます。

一方で、地域のバザーで年に一度だけ手作りクッキーを並べる、という場合は扱いが変わることがあります。単発のイベント出店については、自治体によって簡易な届出で済む仕組みが用意されていることもあります。ここは自治体ごとに運用が違うので、「バザーだから大丈夫」と決めつけず、事前に確認したほうが安全です。

なぜ「お裾分け」と「販売」の境目が曖昧に感じるのか

誤解が生まれる背景には、日本の食文化にある「お裾分け」の習慣があります。作りすぎた煮物やお菓子を近所に配るのは、昔からごく自然な行為でした。この感覚が、フリマアプリでの販売にもそのまま持ち込まれているように見えます。

もうひとつの理由は、フリマアプリやSNSの仕組みそのものです。プラットフォーム側は出品者が食品衛生法上の許可を持っているかどうかを基本的に確認しません。個人間取引という建て付けなので、手続き上は誰でも簡単に出品できてしまいます。この「簡単にできる」ことと「法律上問題ない」ことは、まったく別の話なのですが、混同されやすいのです。

実際、出品ページの説明欄に「自宅で作った手作り品です、アレルギー表示は保証できません」と書いてあるものをよく見かけます。書き手は誠実なつもりでも、この注意書き自体が、営業許可を得ていない状態で販売していることを示してしまっている場合もあります。

また、無料でおすそ分けする延長線上として「材料費だけいただきます」という形で少額のお金を受け取るケースもあります。これも、対価を得て食品を渡している以上、無償の贈与とは扱いが変わってくる可能性があります。金額の多寡ではなく、対価性の有無が判断材料になる、という点は覚えておいて損はありません。

売る前に確認しておきたいこと

結論として、継続的に食品を売る予定があるなら、出品する前に管轄の保健所へ相談するのがいちばん確実です。電話一本で、扱う食品の種類や販売方法を伝えれば、許可が必要かどうか、必要ならどんな設備がいるかを教えてもらえます。

手順としては、まず何を作って売りたいかを整理します。焼き菓子なのか、惣菜なのか、瓶詰めのジャムなのか。食品の種類によって必要な許可区分が変わるため、ここが最初の分かれ道です。次に、販売の頻度と規模を保健所に伝えます。月に数回なのか、毎日なのか。この情報をもとに、営業許可が必要かどうかの判断がされます。

具体的には、Cさんという人がジャム作りを副業にしたいと考え、事前に保健所へ相談したケースがあります。担当者から「自宅のキッチンとは別に、基準を満たした調理場所が必要」と説明を受け、結果的に共同の食品加工スペースを借りて営業許可を取得しました。相談していなければ、自宅のまま販売を始めて、後から指摘を受けていたかもしれません。

迷いやすいのは、フリマアプリでの「ハンドメイド食品」出品を、そもそも規約で禁止しているプラットフォームもある点です。法律をクリアしていても、利用しているサービスの規約に抵触すればアカウント停止の対象になります。法律と規約は別物なので、両方を確認する必要があります。

何かあったときの責任は誰が負うのか

売る側が一番想像しづらいのは、食中毒などのトラブルが起きたときの責任の重さです。無許可で販売していた場合、行政指導や罰則の対象になるだけでなく、健康被害が出れば民事上の損害賠償責任を問われる可能性もあります。

しくみとしては、営業許可の制度自体が「何かあったときに原因を追跡できるようにする」ための仕組みでもあります。許可を得た施設は設備や衛生管理の記録が残るため、問題が起きたときに原因究明がしやすい。逆に、個人が自宅で不特定多数に売っていると、原因の特定も、責任の所在もあいまいになりがちです。

たとえば、手作りのシフォンケーキを購入した人が体調を崩し、保健所に相談したとします。販売者が無許可で営業していたことが分かれば、行政からの指導が入るのはもちろん、購入者から治療費や慰謝料を請求される可能性も出てきます。金額が数千円のやり取りであっても、責任の重さはそれとは切り離されて問われます。

ここで書き手として思うのは、「善意で作ったものだから大丈夫」という感覚と、法律上の責任は別のレイヤーで動いている、ということです。作る人の気持ちがどれだけ真剣でも、衛生管理の体制が整っていなければ、リスクはゼロにはなりません。趣味の延長で始めるにしても、売るという行為に踏み出す前に、一度立ち止まって確認する価値はあると思います。

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