作り置きを始めて3週間で冷蔵庫を放置し、結局すべて捨てる。これをやったことがある人は多いはずです。続けている人と続かない人の差は、根性でも料理の腕でもありません。仕組みの作り方です。ここでは、作り置きにまつわる疑問を一つずつ潰していきます。
日曜にまとめて仕込むのは正しいやり方か
結論から言うと、日曜一括仕込みは万人向けではありません。向いているのは、平日に台所へ立つ時間がほぼゼロの人だけです。多くの人には、2〜3日おきの小分け仕込みのほうが続きます。
理由は単純です。一度に7日分作ると、火加減もタイミングも一定になりません。煮物は3日目には味が濃くなりすぎ、葉物は色が悪くなります。作業時間も長くなり、日曜の午後を丸ごと使うことになります。これが3週続くと、日曜が来るのが憂うつになります。憂うつな作業は、たいてい4週目でやめてしまいます。
実際の場面で考えてみます。火曜と金曜の夜、食後の片付けのついでに20分だけ何か一品仕込む。木曜の朝に、前日の残り野菜で副菜をもう一つ足す。これくらいの分量なら、疲れて帰った日でも取りかかれます。1回20分なら、テレビを見ながらでも終わります。
例外もあります。単身で自炊歴が長く、休日の台所仕事が趣味になっている人なら、日曜まとめ仕込みは苦になりません。むしろ楽しみです。家族の人数が多く、品数を揃える必要がある家庭も、まとめて作ったほうが効率がいい場合があります。仕込み方は、家族構成と生活リズムに合わせて選ぶべきもので、どちらが正解ということはありません。
献立を先に決めるべきか、冷蔵庫の中身から考えるべきか
続けやすいのは、冷蔵庫の中身から考える順番です。献立を先に決めて買い物に行くやり方は、理屈は正しいのですが、続かない人が多いのも事実です。
理由はこうです。献立先行だと、買い物リストに縛られます。特売の野菜があっても、リストにないと買わない。逆にリストにあるものが売り切れていると、その日の献立ごと崩れます。予定が崩れると、作る気力も一緒に落ちます。冷蔵庫の中身から考える人は、その日その場で調整できるので、崩れにくいのです。
たとえば、冷蔵庫に豚こま肉と人参と玉ねぎが残っている水曜の夜。献立を先に決めていたら「今日は肉じゃがの予定だったけど、じゃがいもがない」で手が止まります。中身から考える人は「じゃあ炒め物にしよう」とその場で切り替えられます。この切り替えの速さが、続けられるかどうかを分けます。
ただし、行事や来客の予定がある日は話が別です。誕生日や年末年始など、決まったメニューを出したい日は、先に献立を決めて食材を揃えるほうが確実です。普段の平日と特別な日は、同じやり方でなくていいということです。ここは、迷わず使い分けてかまいません。
冷蔵庫がぎゅうぎゅうだと続かないのはなぜか
作り置きの容器で冷蔵庫が満杯になると、高い確率で数日後にやめています。空きスペースがないと、続ける気持ちそのものが萎えるからです。
仕組みを説明します。冷蔵庫がぎゅうぎゅうだと、何がどこにあるか見えなくなります。奥にしまった容器の存在を忘れ、賞味期限が切れて発見されます。一度でもこれをやると「作り置きは無駄になる」という記憶がつき、次から作る量を減らすのではなく、作ること自体をやめてしまいます。もったいない、という感情は、続ける方向ではなく、やめる方向に働くことが多いのです。
具体的な場面を挙げます。4人家族で、副菜を6種類作って容器に詰めた週。冷蔵庫の中段が全部埋まり、牛乳を入れる場所すらなくなりました。結局、手前にある2種類しか食べず、奥の4種類は存在を忘れられたまま1週間後に処分。これが2回続くと、次の週から作り置きをやめる人がほとんどです。
目安として、容器は常に2〜3個までと決めておくと、この事態を避けやすくなります。空いた容器から次を仕込む、という回し方にすれば、冷蔵庫が満杯になることはありません。ただし、業務用の大きな冷蔵庫がある家や、週末しか買い物に行けない地方在住の人などは、事情が違います。買い出しの頻度が低いなら、多めに作って冷凍に回すという選択も現実的です。冷蔵と冷凍を分けて考えるだけで、詰まる感覚はかなり減ります。
味に飽きたときはどうすればいいか
飽きたら、レシピを増やすのではなく、調味料を変えるのが正解です。作り置きが続かなくなる原因の多くは、レパートリー不足ではなく、味の単調さです。
理由を順に見ていきます。作り置きは日持ちを優先するため、しょうゆ・砂糖・みりんの煮物に偏りがちです。同じ調味の組み合わせを3日も続けて食べれば、誰でも飽きます。ここで新しいレシピを探し始めると、手間が増えて挫折の引き金になります。一方、同じ野菜でも味の方向を変えるだけなら、手間はほぼ増えません。塩麹、カレー粉、ごま油とラー油、酢の物。この4系統を順番に回すだけで、素材が同じでも印象がまったく変わります。
具体例です。月曜に作った人参ときんぴら風の副菜。木曜まで残っていて、さすがに飽きてきた。そこで、ごま油と豆板醤を少し足して炒め直す。これだけで、別の一品に見えます。新しく買い物に行く必要も、新しいレシピを調べる必要もありません。
例外として、そもそも同じ主菜・副菜を作り続けること自体が苦にならない人もいます。毎日同じ味噌汁で平気、という人に無理に味変を勧める必要はありません。飽きが挫折の原因になっている人にだけ、この工夫は効きます。自分がどちらのタイプか、一度振り返ってみる価値はあります。
続く人と続かない人、分かれ目は「量」にある
長く続けている人ほど、作る量が少ないという共通点があります。多く作ることが偉いわけではありません。むしろ、多く作りすぎることが挫折の最大の原因です。
仕組みはこうです。最初にやる気があるときほど、人は作りすぎます。初日に副菜を5品も6品も仕込んで満足する。しかし、食べる量は変わりません。結果、消費が追いつかず、余らせて捨てる。この失敗体験が「作り置きは自分に向いていない」という結論に直結します。実際には、量の見積もりを間違えただけなのに、才能や性格の問題だと勘違いしてしまうのです。
具体的な場面で見てみます。2人暮らしで、副菜3品を大きめのタッパー一杯ずつ仕込んだケース。1食で食べる量は小鉢一つ分なのに、タッパーには5〜6食分入っています。3日で食べきれず、4日目には味が落ちて捨てることになりました。これを2週続けて、作り置き自体をやめてしまった人を何人も見てきました。最初は1品、多くても2品。それも小鉢2〜3杯分でやめておく。物足りないくらいでちょうどいいのです。
例外もあります。家族が多く、消費のスピードが速い家庭では、多めに作ってもすぐになくなります。この場合は量を絞る必要はありません。逆に、単身者や少人数世帯ほど、少なめから始めて、食べきれる量を体感してから増やすほうが失敗しません。ここは頭で考えるより、1週間実際にやってみて、余ったかどうかで判断するのが確実です。

